Dolittle
子供の頃読んだのは、ドリトル先生航海記。
ちょうどその時期に映画館で見せてもらった実写版の
大きなかたつむりに乗って海を渡る映像とともに魅せられた。
当時買ってもらった本は、カラフルで子供にわかりやすい挿絵が入っていた。
古本市で見つけた文庫、ドリトル先生アフリアへ行く。シリーズの初回作品だそう。
子供の頃見た絵とは違うモノクロのペンタッチの挿絵、翻訳は井伏鱒二のもの。
この本が生まれたいきさつや、そのあたりの話を松岡正剛さんが本から抜粋紹介してくれているので割愛するが
当時石井桃子がこの本を日本で出版した当時の時代背景を初めて知った。
原文を知らないとわからないが、井伏鱒二ならではの翻訳の妙につても文中のあとがきでふれられている。
井伏鱒二にとっても唯一の翻訳作品。
作者ヒュー・ロフティングは、戦地から自分の子供達への手紙に物語を託して送ったそうだ。
戦地で動物が犠牲になることに傷ついたロフティング自身の心も慰めるための物語だったと思う。
文中の挿絵は、子供達への手紙に描き添えた作家本人によるもの。
とぼけたユーモアのあるキャラクターと見事な構図が相まって、とてもウィットに飛んでいる。
土木技師として図面作成で鍛えられたバランス感覚を思わせる。
サンテグジュペリの星の王子様のイラストもとても好き。
彼が戦地へ赴く前に書かれた作品。
子供の当時はわからなかったが、今となって読めばこれは彼の妻に宛てた物語だったとわかる。
唐突なバオバブの木やゾウを飲込んだ蛇や気位の高いバラの存在も、
同じ人生を重ねた妻へのメッセージ=暗号のようにも思う。
作家本人の挿絵は、とても情緒的でロマンチックで、やっぱりラブレターならではだと感じる。
J.R.R. トールキンのが幼い子供達が成人するまで毎年送り続けた、サンタクロースからの手紙も素晴らしい。
こちらは年月の積み重ねのある超大作だが、クリスマスらしいエンターテインメント性の高い
にぎやかで楽しいイラストが満載。先輩にその本を見せてもらって、すっかりやられてしまった。
これは映画にならないのかしら。
ドリトル先生からだいぶ脱線してしまったけど、この本はまたクリスマスの頃にまた思い出すとする。
そういえば、シートン動物記も彼自身の作画によるもの。
彼の画力の素晴らしさと、観察力故に描ける動物の姿態、躍動感。
実は素晴らしい装丁デザイン作品を知ったのも先輩と行った博物館でだったな。
by n_home
| 2012-04-13 11:11
| ひとりごと